記事監修・写真提供:株式会社セスコ

住宅の基礎や床下に、土が細い筋のように盛り上がったものを見かけたことはありませんか?
それは、シロアリが移動するために作った「蟻道(ぎどう)」かもしれません。
シロアリは普段、土や木材の内部など、人の目に触れにくい場所で活動しています。
そのため、蟻道はシロアリの侵入や活動の痕跡を知る重要な手がかりです。
この記事では、蟻道の特徴や役割、見つかりやすい場所について、実際の事例を交えて紹介します。
シロアリが作る「蟻道」について
蟻道とは、シロアリが土や木くず、排泄物などを使って作る、トンネル状の通り道です。
基礎のコンクリートや床下の木材などの表面に沿って伸び、外側からは土でできた筋のように見えます。内部はシロアリが通れる構造になっており、土中と餌になる木材などを結ぶ移動経路として利用されます。
住宅に被害をもたらす代表的なシロアリのうち、ヤマトシロアリとイエシロアリは蟻道を作ります。一方、乾いた木材の内部で生活するアメリカカンザイシロアリは、一般にこのような土の蟻道を作りません。
蟻道が見当たらない場合でも、シロアリ被害がないとは言い切れないことを覚えておきましょう。
また、蟻道には現在使われているものだけでなく、過去の活動の跡として残っているものもあります。
蟻道の有無だけで、今の被害状況や被害の範囲を判断することはできません。
シロアリが蟻道を作る3つの理由
乾燥を避けながら移動するため
ヤマトシロアリやイエシロアリの働きアリは乾燥に弱く、通常は土中や木材の内部などで生活しています。
土の中から建物の木材へ向かう際に、体を外気にさらしたまま移動すると、水分を失いやすくなります。蟻道で移動経路を覆うことによって、乾燥や直射日光の影響を受けにくくしています。
外敵から身を守るため
シロアリにとって、外をむき出しの状態で移動することは、アリなどの外敵に襲われる危険にもつながります。
蟻道には、身を隠しながら移動できる通路としての役割もあります。
餌や水を確保するため
シロアリが生活を続けるには、餌となる木材や水分の確保が欠かせません。
蟻道は、そうした資源のある場所へ行き来するためにも使われます。
イエシロアリでは、餌を運ぶための通路や水を運ぶための通路など、用途の異なる蟻道が知られています。ただし、外観だけでその用途を見分けるのは困難です。
蟻道が作られやすい場所
蟻道は、地面から建物の木材へ向かう経路などに作られます。床下だけでなく、建物の外周や庭の木材で見つかることもあります。
床下の基礎や束石
確認する際の代表的な場所が、基礎の立ち上がり部分や、床を支える束の下に設けられた「束石(つかいし)」です。コンクリートなどの表面を伝って、上部の木材に向かう蟻道が作られることがあります。
束石は、手前側に異常が見えなくても、側面や裏側に蟻道が伸びている場合があります。一方向から見るだけでは見落としやすい場所です。
コンクリートの継ぎ目や隙間の周辺
床下がコンクリートで覆われている住宅でも、シロアリが侵入することがあります。基礎と床面の取り合い部分や、配管の貫通部分などに隙間があると、侵入経路になる場合があるためです。
「コンクリートだから大丈夫」と判断せず、基礎の表面や隙間の周辺にも注意を向けることが大切です。
地面に触れた断熱材の周辺
床下の断熱材が外れたり垂れ下がったりして地面に接していると、その部分を経由して蟻道が作られることがあります。
断熱材の脱落やずれは、床下の状態を確認する際に見ておきたいポイントの一つです。蟻道が見つかった場合は、断熱材だけでなく周囲の木材も含めた調査が必要です。
建物の外側の基礎
蟻道は床下の内側だけでなく、屋外に露出した基礎の表面にも作られます。地面から上へ向かって伸びる土の筋がないか、建物の外周を確認する際に見てみましょう。
ただし、土が付着しているものがすべてシロアリの蟻道とは限りません。ほかの昆虫やクモが作ったものと見分けにくい場合もあります。
庭の杭や放置された木材
地面に打ち込んだ木製の杭や、庭に置いたままの廃材などにも、蟻道が作られることがあります。特に木材を建物に立てかけている場合は、建物へ向かう経路になる可能性があるため注意が必要です。
屋外の木材で蟻道が見つかったからといって、住宅にも被害があると決まったわけではありませんが、建物周辺の状況を確認するきっかけになります。
写真で見る蟻道の実例
ここでは、シロアリ防除の現場で確認された蟻道を紹介します。できる場所によって形や伸び方が異なるため、複数の事例を知っておくと、異変に気づく手がかりになります。
実例1:束石の表面を伝う蟻道
地面側から束石の表面に沿って、上方へ伸びた蟻道です。床下の木材に向かう経路として、このように支持部分の表面が利用されることがあります。見える面だけでなく、裏側にも注意が必要です。

実例2:基礎の立ち上がりにできた蟻道
基礎の立ち上がり部分を伝って伸びた蟻道です。上部の木材や壁の内部につながっている場合もあり、見えている蟻道の長さだけでは、被害がどこまで及んでいるか判断できません。

実例3:床下がコンクリートの住宅にできた蟻道
床下がコンクリートで覆われていても、基礎と床面の隙間などから侵入し、蟻道が作られることがあります。床下の仕上げだけでシロアリ被害の有無を判断できないことがわかる事例です。

実例4:断熱材を経由して伸びる蟻道
地面に接した断熱材から、建物側へ伸びた蟻道です。床下の点検では、木材や基礎だけでなく、断熱材の状態にも目を向ける必要があります。

実例5:屋外の基礎にできた蟻道
建物の外側にある基礎の表面に作られた蟻道です。床下に入らなくても、日常の掃除や庭の手入れの際に発見できる場合があります。

実例6:庭の杭や廃材にできた蟻道
庭の杭や放置された木材に作られた蟻道です。シロアリの活動は住宅の内部に限られません。建物の周囲に不要な木材を置いたままにしないことも、住まいの環境を整えるうえで大切です。

蟻道らしきものを見つけたら
蟻道のようなものを発見しても、すぐに壊さず、まずは見つけた場所と状態を写真に残しましょう。周囲を含む写真と近くから撮った写真があると、専門業者に状況を伝えやすくなります。
蟻道を取り除くだけでは、シロアリの駆除にはなりません。
また、使われていない古い蟻道や、ほかの生き物が作ったものの可能性もあります。現在の活動状況や木材への被害を確認するには、専門的な調査が必要です。
無理に床下へ入ったり、ご自身で判断したりせず、しろあり防除施工士などの専門知識を持つ人に相談してください。

